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ep16 政争(1)

Auteur: 根上真気
last update Date de publication: 2025-04-10 07:01:08

そんな時だった。

「なんだ?」と隣のディリアスが何かに反応した。

何かと思いリザレリスは視線を彷徨わせる。すると、玉座に向かって三人の重臣が歩み出てくるのが目に入った。

「いったいどうした、ドリーブ卿」

ディリアスが声をかけてもそれには応えず、三人の重臣たちは王女の面前まで来て跪いた。ディリアスは怪訝な表情を浮かべる。

「ドリーブ卿、なんのマネだ」

「ディリアス公。私は王女殿下の、そして我が国の未来のために、こうしております」

三人の真ん中にいる、ドリーブという名の中年男が口をひらいた。この小太りの侯爵は〔ブラッドヘルム〕の外務大臣を務める重臣で、狸のような狡猾な面構えが印象的だ。ディリアスより位は下だが、手練手管の政治力を駆使し、彼に匹敵する確実な勢力を築いている。

「こんなタイミングでわたしになんの用だ?」

リザレリスがドリーブに言葉をかけると、ディリアスが割って入ってくる。

「王女殿下はもうお退がりくださいませ」

「なんでだ?こいつがわたしに話があるんだろ?」

「さようでございます!私は王女殿下にお話しがあるのです!」してやったと言わんばかりにドリーブが声を上げる。

「ドリーブ卿。王女殿下に対して失礼ではないのか」ディリアスの口調が厳しいものになる。

リザレリスは小首を傾げる。「どうしたんだよ、ディリアス?」

「王女殿下。ここは私の言うとおりに...」

「べつに話を聞くぐらいいいだろ?」

「ですからここは...」

なぜか執拗に食い下がるディリアスに、リザレリスは苛立ちを覚える

「なんでそこまでおまえに指図されなきゃならないんだよ」

王女の言葉にニヤリとしたドリーブは、大きく息を吸い、ここぞとばかりに声量たっぷりに口を切る。

「王女殿下!」

「なんだよ。声デカいな」

リザレリスはディリアスを制して話を聞く姿勢を見せた。ドリーブは心の中でよしと呟く。

「今、我が国は大変な状況にございます!」

「経済が逼迫してるらしいよな」

「五百年間の眠りから覚めたばかりの王女殿下には、まだその実情まではおわかりにならないかもしれませんが、これはまごうことなき事実です。この点について、誰も意見の相違はないでしょう」

ドリーブはディリアスに一瞥をくれる。これにはディリアスも頷くしかない。確かな事実なのだから。

「それで、このような衆目に晒された場所で、ドリーブ卿は王女殿下に対し何を申すのか?」

仕方なくディリアスは話の先を促した。ドリーブは内心ほくそ笑む。

「現在、我が国の経済は〔ウィーンクルム〕との親密かつ友好的な国交関係があって成り立っています。それ自体の賛否はさておき、これは両国の歴史的な関係に基づいて築かれたものです」

「で、なにが言いたいの?」

難しそうな話が嫌いなリザレリスは面倒くさそうに結論をせかした。

「はい。問題はその〔ウィーンクルム〕との友好関係が、かんばしくないものとなっているということです。これは現ウィーンクルム国王治世になってから如実になったものですが......いずれにしても、我が国の経済は逼迫しているのです」

「それ、なんとかできないの?」

「この現状を打破するための、もっとも有効的かつ効果的な手段がございます」

「なんだよ。もったいぶらないで言ってみろよ」

この時、再度ディリアスが割って入ってこようとしたが、リザレリスはそれを許さなかった。ドリーブは、ニヤッと勝利を確信する。

「現ウィーンクルム国王、ファンドルス・ヴォーン・ラザーフォード王には三人の息子たちがいます。そして最近、現国王が後継を定めようとしているという情報を入手しました」

「へえ、そうなんだ」

「そこでです!」 

「そこで?」 

「王女殿下!未来のウィーンクルム国王たる王子と婚姻を結ぶのです!」

ここ一番の最大の音量で、ドリーブは叫び上げた。

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